2017年、世界遺産に登録された福岡県宗像市の「沖ノ島」。きっと、みなさんが思い浮かべるような世界遺産とは一味違っていると思います。というのも、沖ノ島には、一般の人は上陸することができないから。つまり“感じる世界遺産”ということなんです。

沖ノ島(遠景)
画像提供:宗像市

とは言っても、色んな意味で沖ノ島に近づける場所はあります。

大島にある「沖津宮遙拝所(おきつみやようはいじょ)」からは直接見ることができるんです。とはいえ、大島と沖ノ島の距離は60kmもあり……。条件がそろって運がよければ、といった感じです(5日に1回の確率だとか)。あとは、「海の道 むなかた館」のVR。それはそれでいい感じなんですけど、直接体感できるのとはちょっと違っていて。

“沖ノ島って、かなりハードルが高い”というのが私の正直な感想でした。


そんな時に見つけたのが、宗像市の「粋工房(すいこうぼう)」が作る「沖ノ島朱(おきのしまあか)」というガラスです。

一見関係なさそうに見えますが、ガイド本で見かけた「沖ノ島の塩で突然変異」みたいなスピリチュアル系の文言に惹かれて、工房へ。お話を聞くうちに、沖ノ島に一番近いのはこれだ!と思うようになったんです。

「沖ノ島朱」の
ウソのようなホントの話。

「沖ノ島朱」は、鮮やかな明るい朱色が特徴です。

タンブラー 2800円(税別)
勾玉チョーカー 1800円(税別)

「粋工房」の従来の配合で出る赤色は、どちらかというとちょっと黒っぽい赤で、「沖ノ島朱」の朱色と、原料の内訳はほとんど一緒です。何が違うかっていうと、原料の中の塩の種類。ただ単純に、塩を、沖ノ島周辺の海水を使って作った塩に変えてみたところ、鮮やかな朱色になったというんです。

市場にはほぼ出回らないという「沖ノ島塩」。
通常の塩と比べてちょっと茶色に見えるのは、アミノ酸、言い換え“海の恵み”が入っているから。あとは、沖ノ島から流れ出る湧き水や色んな成分なんかも含まれていると思うと……。そんな沖ノ島の湧き水は絶対に腐らないなんて伝説があったりするそうですから、本当に不思議な話です。

全部偶然、巡り合わせ。

代表の伊藤さんからは、このあとも興味深い“偶然話”が続々。そもそも、沖ノ島朱の誕生は、色んな偶然が重なってのことなんだそうです。

「きっかけは、市の商工会からの『何か宗像の特産品を作れませんか?』という依頼でした。それから日々、宗像らしさを模索していたころ、原料の塩を宗像産のものに取り替えてみたらどうか?という発想に至ったんです。そこで、宗像で塩を作っている人を探したところ、宗像で唯一塩を作っている河辺さんに出会ったんです。河辺さんは、当時世界遺産登録を控えていた沖ノ島周辺の海水を使った塩も作っているというんだから、“まさにこれだ!”って、塩を分けてもらうことにしました」

宗像の「大島」で塩を作っている塩爺こと河辺さん
画像提供:宗像市

実はここにも偶然が絡んでいました。
創業して23年になる「粋工房」ですが、ガラスの調合をするようになったのは3年ほど前のこと。商工会からの相談があったのがちょうどこの頃でした。塩を取り替えるなんて発想は、調合に関わりだしたこの頃じゃなかったら思いつきもしなかったというんです。


そして、色も偶然で……。

「まさか、塩を変えただけで色に違いが出るなんて思っていませんでした。初めて朱色を見たときは、見たことのない色にスタッフ全員で驚いたんです。不思議なことはまだあって、同じ調合で沖ノ島朱を作っていても、時々突然変異が起こるんですよ」

直近だと、鯛の置物を作ったときに、胴体はオレンジ色っぽくなり尻尾だけ真っ赤なものができあがったんだそうです。

「色んなところに、科学的に説明することができない神秘的なものを感じますよね」

伊藤さんが言ったその言葉に、心から納得しました。

少し大げさに言ってしまえば、沖ノ島朱は神の色かもしれない、と。そして、存在がふわっとしがちな世界遺産「沖ノ島」を一番体感できるのは、この沖ノ島朱なんじゃないだろうか、と思いました。

ちなみに……

沖ノ島朱、作れます。
お店の横の工房では色々体験を受付中。1番人気のコップ作りは3000円(税別)。ただ、沖ノ島朱は毎日やっているわけではないそうなので、早めに予約をしておくことが必要です。

ガラス工房 粋工房
住所:福岡県宗像市田野2331番地
TEL:0940-62-0272
定休日:水曜日
営業時間:9:00〜18:00

■体験は要事前予約(13:00 or 15:15)
・コップ 3000円
・マドラー 500円
・風鈴絵付け 1200円〜
・万華鏡 1200円
・ジョッキ 6000円(大人限定) など
※価格はすべて税別

Photo by JAPAN LOCAL
取材協力:宗像市